カビパン男と私

HOME/横書き縦書き

猪高緑地

(先日猪高緑地を歩いた折、写真を幾枚か撮った。折角だからブログにでも載せておこうと思い、写真だけでは無愛想であるから紹介文を書いた。ところが、文章を書いてみると、写真との相性が悪い。写真など無いほうが読みやすそうなのである。そういうわけで写真のほうを削除して無事本末が転倒することとなった。)

家の近所に猪高緑地といふ公園がある。公園の定義は知らないけれども、名古屋市が管理してゐて誰でも這入れる場所だから公園といふことにして置く。猪高緑地は池や沼がいくつかある他は木や竹が茂っている許りで、たいしたものは何もない。緑地の旧い地図を見たことがあるが、昭和の中頃までこの緑地がある辺りにはさほど大きな森はなく、凸凹の地形上に幾らか林があり、あとは田圃であつたらしい。今の森林然とした様子は戦後に人工的に植物を保護するか植林をするかした結果出来上がつたものなのだらう。生えてゐる木は私には一々見分けることのできぬ常緑樹が多いが、竹林は行き届いた整備がされてゐる。池沼のうち最も大きいものは、周囲を歩くのに十分ほどかかる。二十年ほど前は水際まで降りて見ることができたが、今は柵が出来てゐてそこまでは降りられない。池の西側を北東に進むと古い枝垂れ桜がある。残念ながら咲いてゐる頃に行つたことがない。池の北東へ行くと田圃がある。緩く傾斜した地面に拵えた棚田で、秋になると稲が実る。かつてこの辺りは棚田が多く、その風情を今に伝えんと意図されたものらしい。池の南のはうにはずつと林が続いてゐる。歩行に都合が良いやうに径がいくつも造られてゐるが、雨の後は靴が泥だらけになる。竹林になつてゐるところは、春になると筍が出る。公園の管理者は筍取り禁止の看板を出したりパトロールをしたりしてゐるが、無断でこれを収獲していく者が後を絶たないやうだ。径には小さひ山に通じるものがあり、これを伝つて行くと頂上に出るが、何度行つても自分がどの辺りにゐるのか分からなくなる。地図を見るとこの辺りで緑地の形が抉られたやうに細くなってゐるが、これは長久手市境を越えた向こう側がごつそり住宅地として開発された結果のやうに見える。

@kabipanotoko