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英語の時制についてのメモ

2015-5-9(Sat)

時制というものをあまり気に掛けずに英文を読んでいた。そこで、ちょっと反省して、いったい時制というものからどういう情報が得られるのかを、自分用にまとめてみることにした。〈時間〉を文に供給する仕様として時制を考えてみた禁断のハウツーだ。(誤りを含んでいると思うので、信用しちゃ駄目ですよ。)

用語

時制、完了、進行の 3 種類の属性を、文に対して独立に付与できる。これらの属性の組合せ(2 x 2 x 2 = 8)によって、われわれは文に対して 8 種類の〈時間〉を供給しうる。

時制完了 進行
現在××現在
×現在完了
×現在進行形
現在完了進行形
過去××過去
×過去完了
×過去進行形
過去完了進行形

rise,rose,risen,rising などと動詞の活用を覚えるが、このとき rise のことを現在形、rose を過去形、risen を過去分詞形、rising を現在分詞形などと呼ぶ。これらはすべて単語の活用形の名前のであって、上の表に記したものとは、(密接に関わるものではあるが)別次元のものとして扱わなくてはならない。

現在時制と過去時制

現在時制

現在というものは一瞬しかなく、すぎ去ったそばから過去に積み重なる。

だから現在時制は一瞬の〈時間〉しか文に供給しない。

「食べる」という動作を表現しようとすれば、動画で撮影しなくてはならず、一瞬の〈時間〉では表せない。したがって、*I eat an apple. という現在時制の文はおかしい。

「持っている」という状態を表現しようとすれば、写真を撮影すればよく、一瞬の〈時間〉でも表せる。したがって、I have a pen. という現在時制の文は正しい。

「食べる」のような動作動詞と、「持っている」のような状態動詞を区別することが重要である。これは、日本語で考えてもどちらかわからない場合があり、そういう動詞についてはいちいち辞書を引いて覚えてなくていけない。

現在時制の特別な用法

現在か過去のどちらか一方に結びつけるのが不可能な場合、たとえば「地球は太陽の周りを動く」などという「真理」は、(しかたがないので)現在時制で表現する。こうしたときに用いる現在時制は、現在という時に縛られない表現である。The Earth moves around the Sun. はその例である。move は〈時間〉の幅がないと表現し得ない動作であるが(従って一般に現在時制で書けないことなのだが)、ここではそれが時の流れに縛られない「真理」であることを示すために現在時制が使われている。

同様に、He works hard. と言ったときは、彼がいつも熱心に仕事をしているという意味になるし、He writes novels. は、彼は小説家であるという意味になる。

このことは一瞬の〈時間〉の供給しか必要としない動詞(状態動詞)を使うときでも同じである。たとえば、The earth is a round body.など。しかし、そうした動詞が使われる場合、それが現在に関係した文なのか、それとも時の流れに縛られない文なのかは、内容を見ないとわからないし、そもそもどちらなのかハッキリしない場合も多い。

過去時制

過去には時間の幅があり、過去時制は幅をもった〈時間〉を文に供給する。したがって、現在時制と違い、過去時制ならば「食べる」ということを表現できる。I ate an apple. は正しい。(辞書で動詞を引くと例文の多くが過去時制になっているが、それはこうした事情である)

過去時制は幅のある〈時間〉を供給するので、その中の一瞬を使って写真を撮ることも可能である。したがって、I have a pen. をそのまま過去にずらして I had a pen. と言うことは問題がない。

進行形

現在進行形

現在時制は幅のない一瞬の〈時間〉しか文に供給しないが、進行形を使うとこの一瞬に幅を持たせることができる。

*I eat an apple.(現在時制)は供給される〈時間〉が一瞬なので、おかしな英文だったが、これに進行形を加えて I'm eating an apple.(現在時制+進行形=現在進行形)にすれば、幅のある〈時間〉が供給できて、正しい英文となる。

一方、I have a pen. のように、〈時間〉の幅のない表現が可能な場合は、これをわざわざ進行形にして *I'm having a pen. としてはいけない。進行形にしてはいけない動詞は、その旨が辞書に書いてあることが多い。たとえば [4] の have の項には、"not used in the progressive tense" とある。

過去進行形

過去は元々幅を持つので、ただリンゴを食べたというだけなら I ate an apple. でよい。

I was eating an apple. というように、過去進行形(過去時制+進行形)を使う必要があるのは、たんなる過去時制では表現できない特別な効果が必要な場合である。

たとえば、When I was eating an apple, he opend the door. という例では、リンゴを食べている最中に彼がドアを開けたということになる。リンゴを食べるのに使う〈時間〉の幅を、ドアを開くのに使う〈時間〉の幅よりも広くしている。

別の例。彼が不平を言ったというのは、He grumbled this moring. で済む。それをわざわざ He was grumbling this morning. とすると、grumble している〈時間〉が延長され、長々と不平を言ったか、繰り返し不平を言うという感じになる。

なお、現在進行形で使えない動詞は、過去進行形でも使えない。たとえば、*I was having a pen. は誤りである。

進行形の特別な用法

幅のない〈時間〉で使える動詞(状態動詞)で現在進行形、過去進行形の文を作ることはできないが、無理に進行形にすると、特別なニュアンスが表されることになる。たとえば、love(愛する)は I love you. のように使える状態動詞である。これに無理に進行形にして I'm loving you more and more. のようにすると、「もっともっと好きになる」という、〈時間〉の幅を感じさせるニュアンスが出てくる。

完了

現在完了

過去という時間の終点は、現在という一瞬にある。現在完了(現在時制+完了)は終端が現在にある、幅を持った〈時間〉を表す。〈時間〉の幅に現在の一瞬を含んでいるので、過去形を使うことができない。

I've just done my homework. というのは、今まで宿題をやっていて、ちょうど今終えたところである。

現在完了の意味については、継続だの結果だの経験だのと、さまざに分類されて説明されることが多いが、「過去を始点とする出来事(あるいはその結果引き起こされた状態)の現在までの継続」と考えれば、あとは多少の慣れと常識的な判断によって解釈できるのではないかと思う。

現在完了がA(過去の一点)からB(現在)までの〈時間〉を表すとき、Aを示す副詞(句)を使うことはできず、AからBまでの幅を示す副詞(句)(for... 等)が用いられることが多い。なお、Bを示す副詞は使われることがある。

現在完了進行形

現在完了に進行形を併せて現在完了進行形にすると、現在という一瞬が幅を持ち、その結果、〈時間〉の幅の終点が少し未来に食い込む。

したがって、I have been working. と言うと、これまでも仕事をやってきて、今もやっていて、これからも続けていくという意味になる。

なお、I have been working. は、「I was working.(過去進行形) + 完了」と考えるとわけがわからなくなる。そうではなくて、「I have worked.(現在完了)+進行形」と考えるとわかりやすいのではなかろうか。

過去完了

現在完了が供給する〈時間〉の帯をそのまま過去に向かってずらすと、過去完了になる。現在という瞬間を過去のある一瞬にずらしてやると考えるとわかりやすい。

I had done my homework yesterday. と言うときは、〈時間〉の終端(上図の赤丸)が yesterday になる。

また、2つの出来事について語るとき、それらが起こった順番を明確に示すために、先に起こった出来事を過去完了にし、後に起こった出来事を過去時制にすることがある。I read the book which I had got three days ago. など。過去の過去とか、大過去と言われるようだ。

過去完了進行形

現在完了進行形が供給する〈時間〉の帯を、そのまま過去に向かってずらすと、過去完了進行形になる。現在という瞬間を過去のある一瞬にずらしてやると考えるとわかりやすい。

I had been working for three days. は、過去のある時点においてすでに 3 日間働いていて、まだ働き終えていないということである。

未来の表し方

(未来時制があると言う人もいる。たしかに、[1]には、Q.How many Tenses are there? A. As for Tenses or Times, the natural or proper Number is three, because all Time is either past, present, or to come...(p.58)とある。一方、[2]では、「第9章 I 現在時制・過去時制」「II 未来の表し方」という区分けがあり、これは未来時制という考え方をしていない。 [3] では、はっきりと「英語の動詞の基本形は、現在形と過去形の 2 つである」となっている。)

助動詞を使わずに

I'm coming!(いま行くよ!) というようにたんなる現在進行形を使って内容的に未来のことを表現することができる。これは進行形にすることよって現在という一瞬が未来に向けて拡張されるからだと思えばわかりやすい。すでに取り掛かっている感じがヒシヒシと伝わる。

I'm going to leave Japan this weekend.(週末離日します)は、現在進行形だが、be going to do は決まり切った表現で、かなり確実な未来のことを示す。I'm leaving Japan this weekend. ほどには、すでに取り掛かっているという感じはない。ニュアンスの違いとも言える。

We leave here tomorrow.(私たちは明日発ちます)はただの現在時制である。これはたとえば、すでに日程表に書いてあることをツアー参加者に話すときの感じ。予定表を写真に撮って示しているのだなあと考えると、これを現在形で表現するのがわかる気がする。

節の中で

時や表す副詞節の中では、未来のことをただの現在形で表現することができる(動作動詞についても)。ただし、非限定用法の副詞節の中では、助動詞 will などを使う必要があるとのこと。([2]p.211)

条件を表す副詞節(しばしば if に導かれる——仮定法ではない——)の中では未来のことをただの現在形で表現することができる(動作動詞についても)。

注意を要するのは、when に導かれるのは副詞節だけではなくて、名詞節であることもある点(Tell me when ... のような場合)。この場合は、when 以下の節で助動詞 will などを用いる必要がある。

などなど、この項目はやたらと細かい規則が多い。まあ、作文するにはそういうことを知っていなくてはならないが、読むぶんにはフンフンと言って読めばなんとかなりそう(いいかげん)。

助動詞を使って

助動詞が使われると、文に対する〈時間〉の供給は動詞に代わって助動詞が行う。I'll take this.(これもらっとこうか) という文は will が現在形だから、現在時制である。

ただし、助動詞が供給する〈時間〉は動詞が供給する〈時間〉に比べて、グダグダである。上の例でも、〈時間〉の幅を持たない現在時制で、take という〈時間〉の幅を必要とする動詞を使っている。will が元々動詞であったことと関係するのかもしれない。

もっとも、これはそう神経質にならないでもなんとかなりそう。注意する例を 2 つだけ挙げておく。

I'll be eating lunch at this time tomorrow. (明日の今頃はランチを食べているだろう)は未来進行形などと言われる。明日の今頃という一瞬の前から後までランチを食べるという行為が続いている。これを表現するために、ランチを食べるのに使われる〈時間〉を長目にしたい。その欲求が、be eating という進行形として現れているのだろう。

You'll be meeting him tomorrow.(明日彼に会うことになってますよ)は、ちょっとやっかい。形としては、前の例と同じであるが、この場合は主語の意志とは関係なく、そういうことになっているという意味だとものの本には書いてある。

参考

[1] "The Royal English Grammar: containing What Is Necessary to the Knowledge of the English Tongue Laid Down in a Plain And Familiar Way for the Use of Young Gentlemen And Ladys", James Greenwood, 1737
[2] 「英文法解説改訂第三版」, 江川泰一郎, 金子書房、2008
[3] 「総合英語 Forest(フォレスト)第 4 版」,桐原書店, 2003
[4] Oxford Advanced Learner's Dictionary of Current English Seventh edition, Sally Wehmeier,eds., Oxford University Press, 2005