カビパン男と私

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古新聞でショボいスピーカーの音質改善を図るなり

古新聞を結束するとき、私は大変に強く縛り上げるのを常としている。これをかかえ上げて掌で叩いてみると、熟れたスイカを叩いたときに感じるようなビンビンという小気味良い振動が伝わってくる。私は考えた。「これはスピーカの箱を作ったら、いい音がするんじゃないだろうか?」

しかし、いったいどうやったら結束した新聞紙でスピーカの箱を作ることができるだろうか? くり抜くわけにもいかず、いくつかの束を組み合わせるのも困難だ。そして、去年、あるアイディアがひらめいた。「古新聞といっしょにスピーカー・ボックスを結束してしまえばいいんじゃないか?」

だいたいこうした詰まらない思いつきは失敗に終わる。まあ、駄目でも損はしないと思ってやってみた。

結果、このショボいスピーカから出る音は劇的に改善された。低音は明らかによく出ている。特に、アコースティックなベースとギターの音がよりリアルな感じになった。人の声のような複雑な音も、ニュアンスが増しているように思う。

ちなみに、私が主に聞くのは西海岸派のジャズとハイドンであるから、重厚・壮大な音楽を聞くとどうだかわからない。ともかく、私としては生きのよい音になったので満足している。

(写真に撮ってみると思ったよりも貧乏臭かったので、いまショックを受けているところだ)

自分もやってみようという進取の精神に富んだ人のために作成のポイントを書いておく。

まず、結束に使う紐は、平らに巻いて売っているポリエチレンのものがよい。(私は積水化学工業のものを使ったが、同社はレコード巻きと称しているようだ)。新聞をきつく縛り上げようとすると、摩擦によって切れてしまう紐もあるから注意だ。

紐が用意できたら、新聞の束にスピーカ・ボックス 2 つを狭んで固く結束する。こうすると、ステレオ感がある程度失われるが仕方がない。スピーカは数センチ離して挟み込む。一応、左右のスピーカ・ボックス平行にならないようにしてみたが、効果の程はわからない。

ここでなにより大事なのは、きつく縛り上げるということである。そのためには、結び方が重要となる。結び方はさまざまなものが知られているが、私が採用したものの要点だけを記す。

十字に紐を掛けて、一箇所で結ぶ方針であるが、結ぶときには「きつく縛り上げる」段階と、「緩まないように固定する」段階の、二段構えを採用した。

まず、一端に小さなループを作り、もう一端をそれに引っ掛けて引き絞る。こうすると、動滑車と同様で、小さな力できつく締めることができる(とはいえ、それでも手が痛くなるほど強く引く必要がある)。ループの作り方は、検索すればさまざまなものを知ることができる。

次に、いま引き絞った箇所が緩まないように注意しながら(指でおさえておけばよい)、ループを作っていないほうの端をループに固定する。ここでループの一部を棒に見立てれば、棒に紐を結ぶテクニックが使える。これも、さまざまな結び方がある。私が用いたのは、「ふた結び」と呼ばれる結び方だ。

@kabipanotoko