カビパン男と私

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ラテン語の動詞って変化しまくりだよね

ディケンズはラテン語が大嫌いで、ある小説には、いつまでたってもラテン語が習得できないという登場人物を描いているのだそうである(ソース:ギッシング)。いつまでたってもラテン語が読めるようにならない自分としては、自分のことを言われているようで、ちょっとくやしい。私の頭は量産型の安物なので仕方がないのだが、そこを工夫で乗り切れないかと考えてみた。

とりあえずは、動詞だ。

ラテン語の動詞は、時称(tense)、相(voice)、法(mood)、数(number)、人称(person)によって活用する。

命令法を省略しても、単純に考えると、6x2x2x2x3=144 通りあることになる。実際には接続法が未来と未来完了を欠くので、120 通りだが、それでも結構なものだ。

このことを正規化された表に表すとどうなるだろうか。教科書の後ろのほうに出てくる活用表の順に従うなら、次のようなプログラム(シェル・スクリプト)を書くことになる。長くなるので省略するが、120行の出力を想像してほしい。

for m in 直説法 接続法 
do
  for v in 能動相 受動相
  do
    for t in 現在 未完了過去 未来 現在完了 過去完了 未来完了
    do
      for n in 単数 複数
      do
        for p in 一人称 二人称 三人称
        do
          echo $m $v $t $n $p
        done
      done
    done
  done
done | sed -e "/接続法.*未来/d"

さすがにこれはやばいだろうというので、教科書では単数・複数、一人称・二人称・三人称のところはひとつの表にまとめることが多い。そうすると、パターンが下のような 20 個になる。

これでも相当ややこしい。そもそも、この表はコンピュータ向きであって、人間向きではない。人間向きにするにはどうするか。Excel のセル結合のようなことをしたくなるのが人情だ。ためしにやってみると、次のような見慣れた表になる。

いやいや、全然わかりやすくなんかないよ(怒)! 実際にこういう順番で 20 個の表を想像しながら学習すると、頭がぐちゃぐちゃになってくる。

考えてみると、この表が頭に入りにくい原因の一つは、接続法が未来と未来完了を欠くからである。これが一目でわかるようにしなくてはならない。また、6 つの時称は、{現在、過去、未来} と {未完了、完了} の積で表したほうが、わかりやすそうである(たとえば、「過去完了」を「過去 × 完了」、「現在」を「現在 × 未完了」と考える)。

結局、次のように整理して頭に入れることにした。

〈現在・過去・未来〉と〈直説法・接続法〉で、マニュアル車のギアみたいなものを作るわけだ。そして、こうしたギアボックスが 4 つあるのでと考えるわけである。

教科書では接続法をかなり後ろのほうで学ぶので、「なんでこの車は接続法がこんなにアクセスしやすい場所にあるんだ?」と思うかもしれない。だが、ラテン語を勉強してみるとわかるが、この配置はなかなか使いやすい。

ためしに amō でこれをやってみると、次のようになる。

なお、ギアボックスのにある一つひとつの ● に対して、数と人称による 6 つの変化形がある。つまり、直説法現在の amō ● が、amō, amās, amat, amāmus, amātis, amant と変化するわけである。また、動詞の活用にはいくつかのタイプがあるのだが、そのへんはまた別の機会に。

@kabipanotoko