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troff メモ

最終更新：2007/11/22

troff（ティー・ロフ）を使うと、「文書構造とレイアウトの分離」などということが当然とは思われていなかった時代のほのぼのとした雰囲気が味わえる。それでいて、脚注、数式、表が簡単に入れられるから、mpage 以上 LaTeX 未満のツールとして今でも日常生活で使うとハッピーになれる。なお、これはあくまでもウチの環境におけるメモ。

カンタンな紹介

プリアンブルとか、そういうものは要らない。

.TL 
ロフ文明史

.NH 1
ウニークス人の夜明け

.PP
もとより全パソコンユーザの 90 パーセント以上をしめるホモー・フェネストラールム
（窓々の人）が築きし単語文明とはもとより比べるべくもない。
少数人類たるホモー・ウニークシスにおいても今やテフ文明に圧倒されて
ロフ文明は絶滅したかに見える。しかしながら、ロフ文明こそは、
ホモー・ウニークシスの揺籃期において最初に現れた文明の一つなのである。
「釣り鐘の神は清書システムのために PDP-11 なる地をウニークスに与えたり。
長老リッチーは、ウニークスをかの地に導き、かくして進化は続きたり。
この記念すべき清書システムをロフと言ふ」と神話は語っている。
いつの時代も、どの国も、お偉いさん方は清書がお好きなようで……

.PP
参考『UNIX プログラミング環境』Brian W.Kernighan, Rob Pike, 石田晴久監訳, 
アスキー出版局, 1985, p.419

というような入力を

$ groff -ms test.ms > test.ps

とかやってやると

と出力される。（ウチの環境だと入力ファイルが EUC でないと駄目だけどね）

歴史

はじめに roff ありき。これより nroff 生まれる。ここにおいて、 roff はプログラミング可能な言語となりぬ。nroff の後に troff 来たれり。今すでに roff 滅びたれば、現今 roff と称するは nroff, troff の類いなり。 余がパソコンには groff といふものあり。これは、GNU roff に非ず。troff のフロントエンドなり。 groff は補助的なプログラムとともに troff を呼び出し、必要な処理を行うの便を図るなり。 ただし、余のパソコンにおいて、 troff といふは GNU troff のことなり。

仕組み

troff は、マークアップされたテキストを受け取り、写植機のために低級言語を出力する。これは、TeX が dvi ファイルを生成するのに似ている。しかし、troff 用のマークアップ文法は、TeX のそれと同様に人間にとっての可読性は低く、これを解決する手段としてマクロとプリプロセッサが用いられる。また、ポストスクリプトプリンタや html エージェントなどのために、troff の出力を変換するドライバが存在する。これらの前処理、マクロの組込み、後処理といったものを簡単に実行するために、フロントエンドが作られている。

マクロ

TeX と troff が同じといふは、その入力のための文法の見づらさにても当てはまれり。しかして、 TeX に LaTeX のスタイルシート現れたるごとく、 troff にも mm, ms なるもの現れたり。マクロとして組み込んでやれば、ユーザは troff の文法を知らざるとも、mm, ms などの文法を知れば足りるものなり。ほかに、man のためのマクロなどあり。

ms       書類用マクロ
mm       手紙用（？）マクロ
その他いろいろ

プリプロセッサ

表や図のごとき複雑なものは、mm や ms のような組込み用マクロではなく、独立プログラムである tbl を使って troff 入力用フォーマットに処理する。次は主なプリプロセッサである。

tbl	表のための前処理をする
pic	絵のための前処理をする
eqn	数式のための前処理をする
grn	gremlin 図のために前処理をする
grap	grap 言語で書かれたグラフのため前処理をする
soelim	.so コマンドで組み込まれるべきファイルを組込む（らしい）
refer	参考文献目録のための前処理をする

ポストプロセッサ（ドライバ）

troff の写植機用出力を各種の形式に変換する後処理を行うドライバがいろいろある。次は、主なドライバである。

grops	  troff の出力を PostScript に変換。ウチのやつは日本語ＯＫ。
grodvi	  troff の出力を dvi に変換
grotty	  タイプライタ型デバイスのために troff の出力を変換
grolj4	  HP Laserjet 4 ファミリ用に出力を変換
grolbp    Canon CAPSL プリンタ（LBP-4 と LBP-8 シリーズレーザプリンタ）用に
          出力を変換
grohtml   html に出力を変換。pre-grohtml と post-grohtml から成っているらしい。
          ユーザは groff から -Thtml オプションをつけることにより、
          間接的に利用することが期待されている。ウチのやつは日本語通らねえ
gxditview troff の出力を X11 で見るぜ。ウチのやつは日本語通らねえ。

GNU troff の出力には、ポストスクリプト画像を読み込めという命令があり、これを grops に入れてやると、画像を埋め込んだポストスクリプト書類ができ上がる。

フロントエンド

groff という GNU troff 用のフロントエンドを使うと、プリプロセッサで前処理をしてから、マクロを組み込んだ troff で処理し、最後にドライバで処理した出力を一つのコマンドで得ることができる。

groff -ms input.ms > output.ps     # ms マクロを使用
groff -t -ms input.ms > output.ps  # tbl で前処理し、ms マクロを使用
groff -t -ms -Thtml input.ms > output.ps
                                   # tbl で前処理し、ms マクロを使用
                                   # 後処理により html に変換

なお、troff をそのまま使う場合は写植機用の言語で出力されるが、groff のデフォルトの出力形式は Postscript である。

LaTeX の如きは、文書ファイルそのものにいかなるマクロを使用せしものか記せども、troff の場合は、ユーザの判断でプリプロセッサを通し、troff のオプションにていかなるマクロを使用すべきか指定するなり。これは、自分で書いたソースファイルの場合は特段、ソースファイルを他人に渡すような場合は、いかなるマクロを使いしかも伝えねばならぬということなり。しかるに、grog というツールありて、これは、ソースファイルを調べていかなるマクロやプリプロセッサによる処理が必要かを、groff に必要なオプションという形で教えてくれる。

$ grog test.ms
groff -t -ms test.ms

マニュアルの類

同じ事柄を二つの方面から表現することができる。帽子を頭の上に載せるものと言ってもいいし、頭を帽子の台と言ってもよい。もともとあった troff から見ると、groff は「フロントエンド」で、groff から見ると troff は「troff プロセッサ」である。

man page はあちこちに分かれている。

groff(7)          troff のコマンドやレジスタ
groff(1)          troff のフロントエンドとしての groff
troff(1)          UNIX troff にない機能の説明
groff_char(7)     特別な記号類の説明
grops(1)          grops の説明（画像張り込みについてはこれを参照）
man (7)           man マクロの説明
などなど

The GNU Troff Manual というのが検索で引っかかってくるが、中身が出来上がっていないようだ。

ms マクロについては、http://www.cs.berkeley.edu/~janp/Help/textms.html なんかも参考になるか。カーニハンらの『UNIX プログラミング環境』にも、基本的な情報あり。

まとまった情報を得ようとしたとき、http://web.cecs.pdx.edu/~trent/gnu/groff/ にまとめてある情報が結構役立った。

最終的には、ベル研ということらしい。

ベル研の古物倉庫（http://cm.bell-labs.com/7thEdMan/bswv7.html）にある UNIX 7 版のマニュアル pdf（v7vol2a.pdf）をダウンロードすると、ms Macro, ms reference card, Eqn, Eqn User's Guide Tbl, Refer, TROFF, TROFF Tutorial など有用な説明が見つかる。

そのほか、http://cm.bell-labs.com/cm/cs/cstr.html（やはりベル研）から

J. F. Ossanna, Nroff/Troff User's Manual
B. W. Kernighan, A Typesetter-Independent TROFF
Brian W. Kernighan, PIC -- A Graphics Language for Typesetting (Revised User Manual)

など有用なものが得られる。もっとも、ベル研の説明が GNU troff にどこまで当てはまるかは別の話だ。

関係ないか

直接の関係はないけど、Times-Roman とかない環境で、pdf 変換して読もうとしたとき、http://www.nn.iij4u.or.jp/~tutimura/tex/dvipdfm.html が参考になったよ。

またまた、関係ないけど Times がない、とかいう場合、赤帽がタダでくれる https://www.redhat.com/promo/fonts/ の Liberation fonts とうので代用できるかも。

troff の生コマンド

コメント

コメントは \" で作れるが、それだけでは、空行が出力される。

.\" Comment

とすれば、空行の出力を抑制できる。

スペース

スペースはその数だけ出力される。つまり、フォントを選べばスペース文字でスペーシングを行い

こんなことが可能。

troff のソース

.ft C
.nf
Country Language  Capita
----------------------------
Japan   Japanese  Tokyo
U.S.A.  English   Washington
----------------------------

.ft C は、「フォントを Courier に」。.nf は「詰め込みも字間調節もするな」。

同様の趣旨を LaTeX で実現するためのソース。

\documentclass{article}
\begin{document}
\begin{verbatim}
Country Language  Capital
----------------------------
Japan   Japanese  Tokyo
U.S.A.  English   Washington
----------------------------
\end{verbatim}
\end{document}

改行および空行

空行というのは、すごく大雑把にいうと 2 つ以上連続した改行である。ま、これは期待通りだ。

GNU groff で入力にある改行をすべて無視するためには、

.de BRL         \"空行マクロを定義＝空行無視
..

として、何も内容を書かずにに空行マクロを定義しておけばよい。

文字の大きさ

入力行の行頭で指定する方法と、途中で指定する方法がある。

デフォルトは 10 ポイントだ。
.ps 12
12 ポイントになり、
.ps
前のサイズに戻ってみる。
入力行の途中で\s12大きくなり\s0また戻る。
相対的に\s+2大きくなり\s0また戻る。

元々の troff は、写植機の都合を考えて、文字サイズは、1,2,...,12,14,16,18,20,22,24,28,36 ポイントしかなかった。だから、13 ポイントを指定すると、12 ポイントになるということだった。しかし、私の使っている troff は 1 から 39 ポイントまでのポイントが使えた。小数も可である。それでも 40 以上は指定できない。

行送り

「行送り＝行間＋文字サイズ」である。文字の大きさが変わっても、行送りは変わらない。

とても大きな字が入ってくると、文字が重なったりします。\s18ほらこんなふうに。\s0

.vs 20p
これを避けるために、行送りを調節しなくてはなりません。\s18ほらこんなふうに。\s0

.vs
もう衝突の危険は去ったので、行間を元にもどしてもいいでせう。

行送りはすぐさまそれが適用されるので、段落の途中で行送りを変えると、思わぬ結果が生まれる。なお、デフォルトは、12 ポイントである。フォントサイズには単位がつかないのに、行送りには i (=inch) という単位がつく。これは、フォントサイズはもともと数字ではなく名前であり（たとえば 12 や 14 があるのに 13 がない）、これに対して行送りは数字であることに由来するのではあるまいか。

行長、インデンション、左マージン

.po 1i  \  左マージンが半インチ
.in 5w  \  インデンション日本文字５文字ぶん
.ti 1w  \  字下げ日本文字１文字（＝ti-in)ぶん
.ll 20w \ 行長日本文字１文字
吾輩は猿である。名前はあるが教える気はない。
.po     \ 一つ前に戻す
.in     \ 一つ前に戻す
.ll     \ 一つ前に戻す
念のため言っておくが、猫ではない。

などとすると、改行を次段落への区切りとみなした上で、段落頭を 1 文字下げすることができる。

上下マージン、あるいは、１ページの行数

改ページのコマンドは .bp である。

troff には上マージンとか下マージンという概念はない。１ページに何行という概念もない。ある（見かけ上の）行を出力したあとに、現在位置が指定されているラインを超えるならば、次ページに進むというしかけを作っておくのである。いわば、罠と、罠によって発動されるマクロの二つによって、この仕事がなされる。Tutorial に説明があるので、読んでくさい。

もっとも（これは実装によって違うのかもしれないが）、そんな細かいことをしなくても、troff に 1 ページにおさまらないようなテキストを食わせると、テキトーなところで改ページされて出力される。どうもそのときのデフォルトは letter サイズ用につくられているらしい。もしかすると、私がペーパー・サイズにかんするオプションを見逃しているのかもしれない。最も原始的な仕組みは、

.de NP              \" 罠に獲物がかかると発動されるマクロ定義開始
'bp                     \" 改ページ  
'sp 0.5i                \" 上から 0.5 インチ空ける
.tl 'left'%'right'      \" ヘッダ左に left 右に right 中央にノンブルを出力
'sp 0.5i                \" ヘッダの後に 0.5 インチ空ける  
..                  \"マクロ定義おわり
.wh -1i NP          \" マクロを発動するための罠を仕掛ける

てな具合。詳細はカニハン Tutorial の説明とか参照。

フォント

postscript 出力用に使えるフォントは、（ウチのマシンでは）/usr/share/groff/1.17.2/font/devps を見ればいいらしい。

デフォルトフォントは、ファミリー単位でコマンドラインから与えることができ、たとえば、Courier を指定するためには -fC というオプションで、

$ groff -fC input.tr
$ groff -fC -ms input.tr # ms マクロ使用時

などとすると、ソースファイル中の R, I, B, BI がそれぞれ H, HI, HB, HIB を指すようになる。

troff の生コマンド（インライン版）

\fICourier Italic, \fBCourier Bold, \f(BICourier Bold Italic, \fRCourier

troff の生コマンド（非インライン版）

.ft I
Courier Italic,
.ft B
Courier Bold,
.ft BI
Courier Bold Italic,
.ft R
Courier

[参考] ms マクロのコマンド

.I 
Courier Italic,
.B
Courier Bold,
.BI
Courier Bold Italic,
.R
Courier

などと切り替えられる（何の指定もないときは .R と同じ）。上のどの方法も同じ結果を生む。なお、デフォルトフォントの指定がなければ、Times ファミリーが用いられる。なお、\fP や .ft P や .P (ms マクロ)が、一つ前のフォントへの復帰の意味で使える。

デフォルト・フォント・ファミリー以外のファミリーを使うには、ソース内で明示的にフォント名を指定する。

troff コマンド（インライン版）

\f(HIHelvetica Italic

troff コマンド（非インライン版）

.ft HI
Helvetica Italic

[参考] ms マクロ・コマンド

.HI
Helvetica Italic

私のところでは、日本語フォントは二種類しかなくて、明朝体が R, I、ゴシック体（サンセリフ）が B, BI において用いられる。

レジスタと単位

レジスタというものがあり、数値を入れるやつと文字を入れるやつがある。レジスタ名は UNIX troff では二文字までだが、GNU troff では 3 文字可。

数値レジスタは整数しか入れることができない。

GNU troff で数値レジスタを使うには、

.nr XYZ 10

のようにして代入する。この XYZ なる変数を

\n[FTS]

のようにする。

単位のことは、いささか混み入っている。

——目次——

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