2015-5-9(Sat)
ある若者がパリの骨董品店で古代エジプトのものというミイラの足首を文鎮代わりに買って帰る。
その晩彼は、書類に載せておいたミイラの足が飛び跳ねる夢を見る。そして、その足がエジプト風の少女と会話を始める。若者は、その少女はファラオの娘で、ミイラの足はかつて彼女の死体から切り取られたものなのだと知る。
若者は足を王女に返し、その礼として彼女の父親に紹介されることになる。王女は若者の手を引き、広大な空間を抜け、歴代のファラオが住む死の国に至る。
褒美に何がほしいかとファラオに尋ねられた若者は、王女との結婚を望む。王は、死ねばすぐに肉体が消え去るような者に娘はやれぬと言い、拒絶する。若者はそこで、夢から覚める。
不思議なことに、昨晩書類に載せておいたミイラの足は、泥人形に代わっていた。それは、夢の中の王女が、足の代わりに置いていったものだった。
主人公はそれが夢であることを承知している。それだけに怖さはない。死の国に向かうのも、少女に手を引かれて空間を抜けるといった具合で、ごく簡単。ホラーというよりはむしろファンタジーというにふさわしいかも。
見どころは、むさ苦しい骨董品店からエジプトの死の国(天然石に掘られた広大な宮殿で、歴代の王のミイラがそこで生きている)への飛躍と、その間に介在する王女。
ゴーティエはジゼルの台本を書いたりしている人で、これもやっぱり舞台っぽい感じなのかもしれない。
原題は Le Pied de momie, Théophile Gautier。雑誌 Musée des familles (1840年9月)に掲載。
私が読んだのは、ラフカディオ・ハーンによる英訳 The Mummy's Foot で、One of Cleopatra's Nights: And Other Fantastic Romances(1882年)所収。
フリーのネット上の資源は、
http://www.gutenberg.org/cache/epub/22662/pg22662.txt (英訳テキスト)
http://books.google.co.jp/books?id=wwNEAAAAYAAJ (スキャン本)
など。
おわり