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Maxima と LISP

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Maxima は LISP 上で動いている。Maxima の仕様がごつごつしたものだと感じられるなら、それは LISP 臭いからかもしれない。

LISP 層探検法

LISP 層に降りる

Maxima から to_lisp() と打つと、LISP 層に降りることができる。LISP 層で (to-maxima) と打つと、Maxima 層に戻ることができる。

(%i1) to_lisp();
Type (to-maxima) to restart

MAXIMA> (+ 1 2)
3
MAXIMA> (to-maxima)
Returning to Maxima
(%o1)                                TRUE
(%i2) 1 + 2;
(%o2)                                  3
(%i3)

Maxima 層にいたままで LISP の命令を実行するためには、:lisp に後続して LISP 命令を書けばよい。このとき入力最後の ; は不要である。

(%i1) :lisp (+ 1 2)
3
(%i1)

このとき、Maxima のラベルの番号は進まない。

参考 http://maxima.sourceforge.net/docs/manual/en/maxima_3.html#SEC7

シンボル名の対応

Maxima 層と LISP 層でシンボル名の対応は複雑であるが、探検のために必要な知識は少しだけだ。Maxima の $foo が LISP の |$foo| に、Maxima の $FOO が LISP の |$FOO| に、Maxima の $Foo が LISP の |$Foo| に、というように相互に対応することだけ知っていればよさそうだ。つまり、LISP 層ではシンボル名を | | で囲むというわけである。そして、LISP 層では、| | で囲んだシンボル名以外を使わないようにすれば、話が簡単である。

参考 http://maxima.sourceforge.net/docs/manual/en/maxima_3.html#SEC7

シンボルはいつインターンされるか

Maxima からシンボル名を入力しただけで、そのシンボルが Lisp 層でインターンされる。

(%i16) :lisp (apropos "mysymbol")

(%i16) mysymbol;
(%o16)                             mysymbol
(%i17) :lisp (apropos "mysymbol")
|$mysymbol|
(%i17) mysymbol: 10;
(%o17)                                10
(%i18) :lisp (apropos "mysymbol")
|$mysymbol|                                variable
(%i18)

数の割り当て

Maxima では、演算子 : を使って、シンボルに数を割り当て（assign）することができる。これを LISP 層で見てみる。

(%i1) x: 100;
(%o1)                                 100
(%i1) :lisp (symbol-value '|$x|)
100

シンボル x（LISP 層で |$x| にあたる）の値セルに 100 が入っていることがわかる。また、もっと簡単に、LISP 層で、この x を評価しても、100 が得られる。

(%i2) :lisp |$x|
100
(%i2)

関数の割り当て

:= 演算子を使ってシンボルに関数を割り当てると、シンボルの関数セルに関数定義が入ると予想される。ところが……

(%i1) f(x):= x+1;
(%o1)                            f(x) := x + 1
(%i2) :lisp (symbol-function '|$f|)
Maxima encountered a Lisp error:

 SYMBOL-FUNCTION: undefined function |$f|

Automatically continuing.
To reenable the Lisp debugger set *debugger-hook* to nil.

そんなもんは定義されておらんと怒られました。

(%i2) :lisp (symbol-plist '|$f|)
(MPROPS (NIL MEXPR ((LAMBDA) ((MLIST) $x) ((MPLUS) $x 1))))

関数定義はラムダ式を連想させるリストになって属性セルに入っていた。当然、Maxima で定義した関数は LISP でそのまま使うことはできない。

(%i2) :lisp (|%f| 1)
Maxima encountered a Lisp error:

 EVAL: undefined function |%f|

Automatically continuing.
To reenable the Lisp debugger set *debugger-hook* to nil.

やはり怒られてしまった。Maxima で定義した関数を LISP で使うために、mfuncall という関数が用意されている。

(%i2) :lisp (mfuncall '|$f| 2)
3
(%i2)

数以外のものの割り当て

シンボルには数以外のものを割り当てることができる。たとえば、x + y を割り当てると、

(%i1) a: x+y;
(%o1)                                y + x
(%i2) :lisp (symbol-value '|$a|)
((MPLUS SIMP) $x $y)

これを LISP 層から見ると、シンボルの値セルに、式がリストの形になって入っていることが発見できる。つまり、

(%i2) :lisp (set '|$b| '((MPLUS SIMP) |$x| |$y|))
((MPLUS SIMP) $x $y)
(%i2) b;
(%o2)                               y + x

とやるのと同等のようである。

y + x と ((MPLUS SIMP) $x $y) はたいへん違うもののように見えるが、前者は Maxima での表現であり、後者は LISP 層での表現で、同じものの別な表現にすぎない。これを確かめるには、LISP から、

(%i3) :lisp (displa '((MPLUS SIMP) 1 2))
2 + 1
NIL
(%i3)

のように displa 関数をつかえば、Maxima 流の表現を知ることができる。あるいは、Maxima 流の表現は #$ と $ でかこめば LISP 中で使うことができるので、これを用いても確かめることができる。

(%i3) :lisp #$x+y$
((MPLUS SIMP) $x $y)

ここで、Maxia 上で x に 1 を、y に 2 を : 演算子を使って割り当てたあと、a を評価してみる。3 になるだろうか。

(%i3) x:1;
(%o3)                                  1
(%i4) x:2;
(%o4)                                  2
(%i5) a;
(%o5)                                y + x

ならなかった。ここから、Maxima でシンボルを評価すると、たんにその値を表示するだけだということがわかる。これは、LISP 層でのシンボルを評価したときと類似している。

もし、シンボルではなくてシンボルの値を評価したい場合、Maxima では ev 関数を使えばよい。

(%i8) ev(a);
(%o8)                                  3

この、Maxima の ev 関数は、LISP の eval 関数に類似している。しかし、類似しているだけであって、Maxima の ev が LISP の eval を使っているというわけではない。((MPULUS SIMP) $x $y) は、LISP がそのまま実行することができるようなリストの形ではない。

——目次——

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