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Maxima 入門的メモ

最終更新：2006-1-16(Mon)

Maxima をインストールしてみた。さわっているうちに分かったことをメモしておくのだ。間違っている、あるいは不正確なことが書いてあるかもしれない。私が使っているのは、CLISP 2.32 上で動いている Maxima 5.9.1 なり。

一応の紹介

Mathematica をはじめて使ったときは、感動したものだ。何に驚いたかというと、因数分解ができるのに驚いた。Maxima はその手のソフトである。GPL に基いて配布されているのがうれしいところだ。

Maxima の公式ページは、http://maxima.sourceforge.net/

起動など

シェルから maxima で起動。GUI インターフェイスもインストールしているなら xmaxima などで起動。

入力の最後には ; （セミコロン）をつける。リターンキーだけでは駄目。セミロンのかわりに $ を使うと、出力を抑制できる。

セッションの終了は quit(); で。

プロンプトには (%iN) ——Nは自然数——がつき、出力の先頭には (%oN) がつく。後で、これを使って参照できる。%i3 をもう一度繰り返して実行させるには、''%i3; とすればよい。ここで、'' はシングルクォーテーションが二つ続いたもの。直前の入力の再実行には、特別に %; とやればよい。

maxima は大文字と小文字を区別する。組込み関数は小文字だけからなり、組込み定数は %e, %pi のような形をしている。（それぞれ自然対数の底、円周率）。

加減乗除は +, -, *, /。累乗は ^ または **。平方根のうち正のもの（つまりルートほにゃらら）は sqrt()。また、乗法は常に * で表現しなければならず、a b は a * b をあらわさない。

1/3; という入力は、たんに 1/3 を返すが、1/3, numer; と入力すると .3333333333333333 が得られる（いちばん下の桁は、しばしば信用できぬとのことなり）。

入力しただけで起こること・起こらないこと

Maxima に数式を入力すると、すぐさまある種の変形が加えられ、その結果が返さされる。

(%i1) x + y;
(%o1)                                y + x
(%i2) y + x;
(%o2)                                y + x
(%i3) 1 + 2;
(%o3)                                  3
(%i4) 2*x + 3*x;
(%o4)                                 5 x

一方、式の展開などは自動的には起こらない。

(%i7) (x + y)^2;
                                          2
(%o7)                              (y + x)
(%i9) 1/a + 1/b;
                                     1   1
(%o8)                                - + -
                                     b   a
(%i9) x^2 - 2*x +1;
                                   2
(%o9)                             x  - 2 x + 1

expand () や rat () や ratsimp () や factor () 等々を用いて明示的に変形を加えることができる。

(%i10) expand ((x + y)^2);
                                 2            2
(%o10)                          y  + 2 x y + x
(%i11) rat (1/a+ 2/b);
                                     b + a
(%o11)                               -----
                                      a b
(%i12) factor (x^2 - 2*x +1);
                                          2
(%o12)                              (x - 1)

値の割り当て（assingment）

n: 1; でシンボル n に 1 を割り当てる。

値の割り当てられたシンボルを評価すると、その値が返される。（値が割り当てられていなければ、シンボル名が返される）

(%i1) n: 1;
(%o1)                                  1
(%i2) n;
(%o2)                                  1

値が割り当てられたシンボルを、入力式の一部として使った場合にも、そのシンボルはその場で評価され、その値に置き換わる。

(%i3) m: n + 1;
(%o3)                                  2
(%i4) m;
(%o4)                                  2

したがって、あとで n の値を 3 に変えても、m の値は以前と変わらない。

(%i5) n: 3;
(%o5)                                  3
(%i6) m;
(%o6)                                  2

シンボル n に値を割り当てると properties (n); の結果に VALUE が現れるようになる。

remvalue (n); で、n に割り当てられた値を削除する。

remvalue (all); で、ユーザがシンボルに割り当てた値をすべて削除する。

kill(n); でシンボル n を削除。kill (all) で、ユーザが作成したすべてのシンボルを削除。

ev ()

シンボルの値として割り当てることができるものは、数に限らない。たとえば式を値として割り当てることができる。しかし、いずれの場合も、シンボルを評価すると、値が返されるだけであり、値が評価されるわけではない。

(%i1) k: x + y;
(%o1)                                y + x
(%i2) k;
(%o2)                                y + x
(%i3) x: 3;
(%o3)                                  3
(%i4) y: 7;
(%o4)                                  7
(%i5) k;
(%o5)                                y + x

シンボルに割り当てられた値を評価したい場合は、ev () を用いる。

(%i6) ev(k);
(%o6)                                 10

仮定

一般に仮定と呼ばれるものには、declare () を用いて表現するべきもと、 assume () を用いて表現すべきものがある。

declare

declare (n, integer); で、n を整数であると宣言する。その結果シンボル n に整数フラグが立つ。expand () の結果などは、これに影響される。

(%i1) expand ((x * y)^n);
                                         n
(%o1)                               (x y)
(%i2) declare (n, integer);
(%o2)                                DONE
(%i3) expand ((x * y)^n);
                                      n  n
(%o3)                                x  y

featurep(n, integer); で n に整数フラグが立ててあるかどうかを知ることができる。

facts (n); で Database Info以下にリストされる要素に KIND (n, INTEGER) が含まれるようになる。facts (); で n 以外の変数に対する制約も表示される。

properties (n); の結果のなかにも、Database Info 以下に KIND (n, INTEGER) が現れることが確認できる。

(%i4) featurep (n, integer);
(%o4)                                TRUE
(%i5) facts (n);
(%o5)                         [KIND(n, INTEGER)]
(%i6) properties (n);
(%o6)                  [Database Info, KIND(n, INTEGER)]

declare で立てることができるフラグは features; で知ることができる。

n に整数フラグが立っていても、実際に n の値が整数でなければ integerp (n) は FALSE となる。

remove (n, integer); で、n から整数フラグを取り除くことができる。

remove (all,integer); で、すべてのシンボルから整数フラグを取り除くことができる。

assume

assume (n > 0); で、n が 0 より大きいことを仮定することができる。

(%i11) abs (n);
(%o11)                              ABS(n)
(%i12) assume (n > 0);
(%o12)                              [n > 0]
(%i13) abs (n);
(%o13)                                 n

facts (n) の結果の中に n > 0 が含まれるので、それを知ることができる。facts () は、すべての assume されたもの、declare されたものを返す。

forget (n > 0) で、仮定 n > 0 を取り除くことができる。forget (all) で、すべての assume されたものを削除。

関数定義

f(x) := x + 1; で、シンボル f に関数定義を入れることができる。

f に関数定義と値の両方を同時に入れておくことができる。これらは、f が使われるコンテキストによって使い分けられる。

(%i1) f : 10;
(%o1)                                 10
(%i2) f(x) := x * 2;
(%o2)                             f(x) := x 2
(%i3) f;
(%o3)                                 10
(%i4) f(3);
(%o4)                                  6
(%i5) f(f);
(%o5)                                 20

fundef(f); で関数 f の定義を見ることができる。dispfun(f, g); で関数 f と関数 g の定義を、dispfun(all) ですべてのユーザ関数定義を見ることができる。

関数定義を入れた f に対して properties (f); を行うと、FUNCTION という要素が加わっていることが確認できる。

remove (f, function); で、f から関数定義を取り除くことができる。

= と equal()

一般的に Maxima で、= は字面（？）が同じになること（syntactic equality）を、equal (m, n) は、 「m, n 中の変数がそれぞれ取りうる範囲のいかなるところにあっても m と n が等しい」ということをあらわす。is () を用いるとき、この差が明確になる。

is () の括弧内に = で結ばれた式が置かれた場合、右辺と左辺の字面が同じであるときに限り is () は TRUE を返す。

is () の括弧内に equal (m, n) が置かれた場合は、「m と n の中に含まれる変数がそれぞれとりうる範囲のいかなるところにあっても常に m と n が等しい」場合に is () は TRUE を返す。

(%i1) is( (x+1)^2 = x^2 + 2*x +1);
(%o1)                                FALSE
(%i2) is( expand((x+1)^2) = x^2 + 2*x +1);
(%o2)                                TRUE
(%i3) is( equal ((x+1)^2, x^2 + 2*x +1));
(%o3)                                TRUE

(x+1)^2 は入力時に展開されないので、x^2+2*x+1 と字面が異る。したがって、これらを = で結んでやると is () は FALSE を返す。expand () で = の左辺を展開してやると、字面が同じになるので is () は TRUE を返す。一方 equal は、取りうるかぎりの x の値において右辺と左辺が等しいので字面が異っても is () は TRUE を返す。

この点から見ると、>, >=, <, <= は = の仲間ではなく、equal () の仲間である。

assume (n = m); の形が許されないのも、これに似た事情である。n の字面はどうやっても m の字面とは同じではない。assume (equal(n, m)); なら可能である。

出入力

記録

対話的に行ったものを記録するには、save("test.maxima",all); で、それを読み込むには、loadfile("test.maxima"); とする。 このファイルはテキストファイルではあるが、人間が読めるようなものではない。

グラフの保存

デフォルトでは、グラフは gnuplot に出力される。これを変更するには、

——目次——

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