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九日目

科、夏、家、谷、欲、歌、画、回、会、絵

科（クワ）

夏（カ）

家（カ）

随分省略されてはいるが、面影がある。

活字と草書の画の対応は、以下のような形を見ると想像がつく。

谷

下図は、隋の時代の字による。

上図においては、活字で「人」のような形をしている部分が「一」の形なっている。次図は漢代の石碑によるものだが、この点で整合している。

欲

これは、六年生の漢字であるが、次に「歌」を習うために「欠」を観察する必要があり（「欠」じたいは資料が少ないので）、ここで習う。

「欲」は、「谷」と「欠」を左右に並べた、われわれに馴染みのある形と、それらを上下に並べた形の二通りが行われる。

（王献之にもとづく）

（王羲之にもとづく）

画の対応関係については、難しいところがあるので、以下詳しく見てみる。

「谷」部分と「欠」部分を別々に見ていく。

まず、「谷」部分を観察する。

（王羲之にもとづく）

水色に塗った部分が草書で一直線であることについては「谷」参照。

オレンジ色に塗った画は、

（[3]西域出土書跡）

と共通点がある。

下の 3 つの図は、「谷」と「欠」を上下に配したもの。上図の赤く塗った画が省略されている。また、「口」部分にバリエーションがある、それぞれをしかと区別できるものではなく、勘によった。

（漢・張芝にもとづく）

（王羲之にもとづく）

（王羲之にもとづく）

ところで、晋・唐時代には、ここまで水色に塗ってきた画を「ハ」の形にすることがすでに行われていたのであり、草書にもこれを採用したものがある。

（王献之にもとづく）

は「ハ」の形を採り、その右半分を省略していると思われる。これは、

（王羲之にもとづく）

から推測されることである。

続いて、「欠」部分を観察する。

（王羲之にもとづく）

上の形は、われわれに馴染みのある「欠」の筆順を用いている。

「欠」の筆順は、他にもある。下は[3]に西域出土書跡として載っていたものであるが、

これは、

という筆順で書くのが自然である。余談ながら、次図に示した欧陽詢（唐）の字も、やはり同様の筆順で書くと上手く書ける。

この筆順によって、次の王羲之の字が理解できる。

また、次のふたつの形についても理解できる。

（王羲之にもとづく）

（王献之にもとづく）

歌（カ）

上図は唐の孫過庭をもとにしたもの。「欠」部分については「欲」参照。

また、「可」参照。

画

[グワ] 「画」は「畫」である。草書は、まるで「中田一（ナカタハジメ）」のサインのようだ。新字体の「画」は、こうした草書の形をもとにしたものと思われる。

回

[クワイ] 上図は王羲之にもとづく。

字種の問題：回は小学校で習う。似た字に、廻、迴（JISではしんにょうの点が一つだが、二つの活字が多い）、囘がある。「言海」（ちくま文庫）を引くと、回忌、回帰線は回だが、廻状、廻船、廻文、廻廊は廻である。どう違うのか小型の漢和辞典（「全訳漢辞海」三省堂）を引いたがわからなかった。

字体の問題：隷書の回は、現在の活字の回とよく似ている。[5]によれば、「明朝体のように方形ならば（一字の中に口を）いくつ（書くの）でもよいが、下をすぼめる楷書では形がとれないので＊の形（ハシゴ形）で書いたのである」（p.628）とある。

会（クワイ）

上は唐の孫過庭をもとにした図。この図の左右が似ているのは、ふたつが兄弟（あるいは、伯父と甥）だからではなく、草書が親で、活字が子だからである。

唐の楷書は、下図右のような形（漢の石碑に似た形あり）だが、上のほうに挙げた草書の形は、これと似ていない。（下図左のゴシック体活字は、康煕字典にあるいわゆる旧字体で、伝統的な楷書と若干の違いがある。）

説文の形（下図左）の中には、はじめに挙げた二つの草書体の形が含まれているように見える。

ちなみに[5]は、はじめに挙げたような草書は以下のように考えると「その変遷がわかるような気がする」（p.294）としている。（下の図は私が[5]より筆写したもの）

絵（クワイ）

糸および会を参照。下図は、唐の孫過庭の字による。

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