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三十一日目

寒、感、漢、官、館、岸、起、其、基、期、客

今日はそろいもそろって、難しい字ばかりだ (^^;;

寒

上図は王羲之を真似たもの。

次図で深緑とピンクに塗った画に対応する部分を行書（次図は王献之を真似たもの）に求めてみる。

[1]のペン字用の字形便覧には、上図でいえば、ピンク→深緑の順で書く草書体が掲載されていて、その形は[2]も取り上げている。それらは、この項の頭に掲げた形とはかなり印象が異なる。

［冗談］最初に掲げた形の字体を楷書風に翻訳してみると……

感

上図は王羲之を参考に作成。

[1]などには、オレンジ色の点が省略されている形が紹介されている。

漢

上図は王羲之を参考にしたもの。さんずいの形は、ひとまず置いておくとして（この形は、べつに真似る必要はなさそうだ）おこう。

フツーっぽく書くとこんな感じかなあ。

ま、そんなことはどうでもよくて、問題は最後の二画、つまり紺色と紫色のところが何なのかということ。

王羲之の他の字に次図のような形がある。

いろいろ突っ込みどころはあるが、今問題にしたいのは、最後に書くギザギザの数が多くなっていること。

一部拡大。

ということだと思う。最初に挙げた形では、上図で赤と黄緑に塗った部分が省略されたと推測。どうしてこれらを省略したのかということは、楷書を見ていてもわからないが、次図の漢の時代の隷書（を真似てシャーペンで書いたもの）を見るとわかるような気がする。

[冗談] では、草書の字体を楷書風嘘字に翻訳。

官

「館」という字を小学校三年生で習うのだが、その前に「官」という字を習っておこう。

最初に王羲之の書いた形を真似て、二つ図を載せる。

ゴシック体活字との対応関係を塗らなかった理由は、遠い親戚だから。

下は、[3]に、漢の章帝の字として載っていたもの。

漢の時代にすでにこの形になっているのだから、ここで楷書の形との対応を云々する気が起こらない。というのは、これまで見てきたのは、東晋から唐あたりの人たちのセンスであって、漢の時代の人のセンスは同断に考えるわけにはいかないからである。

[冗談] 楷書がこの系統を引き継いだら、こんな字になったかもしれない。もちろん、そんな字はないけど。

館

「食」＋「官」。

[冗談] 楷書風翻訳

岸

起

上図は王羲之を真似たが、この形で問題になるのは、オレンジ色に塗った画。次図（唐の欧陽詢を参考にした）のような伝統的な楷書の形を見ると、理解できる。

王羲之自身も次図のような形を書いている。

「走」の下半分における、現在の楷書の形（説文の形に近い）と唐の時代の楷書の形の関係については、「止」参照。

其

三年生の漢字「期」を習うためには、「其」を知らなくてはならない。

上図は王羲之を参考にしたもの。

Ａで示した縦画は左側に対応部分がないが、これは後のほうで示す。

上図で、赤で塗った画が、ゴシック体では横画、草書で点になっているが、これは下図のような形（やはり王羲之）を見ると納得できる。

しかしまだ、黄緑の画と水色の画の対応が不明。この由来には、もっと古い形にありそうだ。

もう少し時代を遡ると、[3] に晋の索靖の字として次のようなものがある。

ほとんど王羲之の形と同じだ。しかし、少なくとも、この字体は王羲之の発明ではないことがわかる。

[3] には、呉の皇象の字として、次の図のような形が載っている。呉というのは、三国志でおなじみの呉であろうから、晋（西晋）より少し前だ（いくらかかぶっているが）。

ここまでくると、漢の時代の隷書と比較して、画の対応が見えてくる。

上図で、水色に塗った画がどれに当たるのか（上図のようなのか、それとも波磔〔はたく〕のある長い横画なのか）は、私の勘によっただけである。

ちなみに、漢の時代の「其」はさまざまに書かれていて、おなじみの「其」もその一つ。

基

「其」を習ったついでに、「基」も調べてみる。

上図においてＡで示した縦画は、左側のゴシック体に対応部分がないが、これについては「其」参照。

上図（隋の智永の形）がストイック過ぎるというなら、唐の懐素が書いた形はいかがか。上図と比べると、一画少ないが、紺色の画が省略されたのではというのは、私の勘。

紺色の画を省略しないと、次の孫過庭の形のように、「土」を強引に左側に引き戻さない限りバランスが悪いということか。何がなんでも、「其」と「土」をつなげて書きたかった人たちの涙ぐましい努力なのかもしれない。まあ、この点は字体の問題ではなくて、美的なセンスの問題だから、本題ではない。

一部拡大。

期

「其」「基」と見てきたが、やっと三年生の漢字「期」を見ることにする。まずは、王羲之の書いた形。

「其」「基」の塗り分けと整合させるために、緑に塗ったところから書きはじめるように塗った（上図で赤く塗った部分は最後に書く）。

Ａの部分はゴシック体に対応部分がないが、これについては「其」参照。

「其」と比べるとすぐわかるが、「其」の草書で第一画目にあたる部分が省略されている。

ツクリの部分（月）は「青」参照。

もうひとつ王羲之の形を見る。

やはり、「其」「基」や、この項最初に挙げた「期」と塗り分けを合わせてある。今回は、最初の赤の画は書いて、そのかわりオレンジの画が省略されている。

客

上図は、顔真卿を参考にした。

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